コンピュータ将棋レビュー

第14回世界コンピュータ将棋選手権 決勝


●概要

 2004年5月2/3/4。今年も第14回世界コンピュータ将棋選手権が開催された。
 現在、コンピュータ将棋界ではもっとも権威ある大会だと思われる。
 CSAではその棋譜を全て公開している。今回はそれを元に、この大会を振り返ってみたいと思う。

 今回から、全てのソフトを商品名ではなく、参加ソフト名で呼ぶことに変更した。YSSはAI将棋として売られているが、そのままYSSと呼称する。IS将棋やKCCなども同様である。個人的には、去年に書いた通り商品名で呼んだ方がユーザーのためにはいいと思っているが、いろいろ考えた末にこうすることにした(実は、各ページの下部に小さく注釈を入れることで「両名併記」に対応しようかとも思った)。
 楽観的に見れば、最近ではコンピュータ将棋の理解も進んだことだし、対戦表に商品名があればそれでいいかな、という気もしている。

 こうやってエラそうに解説を書いている白砂の棋力はと言うと、将棋倶楽部24で三段、R2000前後程度のヘタレである。今大会決勝に進んでいるソフトの大半には、Rでは負けていることになる。
 くそぅ……(泣)。

●ルール等

●戦前予想

 対戦表は以下の通り。

 プログラム名 1234567 SB
1東大将棋
(IS将棋)
TACOS
 
永世
 
柿木
 
金沢
激指
 
KCC
YSS

 

 

 

 
2AI将棋
(YSS)
金沢
 
柿木
永世
 
KCC
 
TACOS
激指
IS将
 

 

 

 

 
3激指 柿木
 
TACOS
 
金沢
永世
IS将
YSS
 
KCC

 

 

 

 
4銀星将棋
(KCC将棋)
永世
 
金沢
 
TACOS
YSS
柿木
IS将
 
激指
 

 

 

 

 
5TACOS IS将
激指
KCC
 
柿木
 
YSS
 
金沢
永世

 

 

 

 
6永世名人 KCC
IS将
 
YSS
激指
 
金沢
 
柿木
TACOS
 

 

 

 

 
7柿木将棋 激指
YSS
 
IS将
TACOS
KCC
 
永世
 
金沢

 

 

 

 
8金沢将棋 YSS
KCC
激指
 
IS将
 
永世
TACOS
 
柿木
 

 

 

 

 

 上位3チーム、つまりIS将棋/YSS/激指の3ソフトがシードで、残りが予選勝ち上がり組みである。

 予選通過1位はKCC将棋。昨年も決勝4位で、まぁ決勝進出は妥当なところだろう。14位の大槻将棋に一発喰らった以外は、TACOS、永世、柿木、金沢すべてに勝って8-1の独走。上位3強の牙城を崩せるか期待がかかる。
 もっとも驚いたのは(<ごめんなさい)、予選通過2位のTACOS。フリーのソフトの中では強い方だったようなので、いつ出てきてもおかしくないとは思っていた。しかし、永世、柿木、金沢あたりの市販ソフト、KFEnd、K-Shogiといった強豪フリーソフトにしっかり勝っての2位。本選でどれだけ暴れられるのか興味が尽きない。
 永世名人、柿木将棋、金沢将棋は定番の市販ソフト。みなさんもよく知っているだろう。特に永世名人は、12回13回14回と3年連続の決勝進出。市販ソフトとしての評価は決して高いとはいえないが、安定した実力を発揮しつつある。今後、フリーソフトでは物足りなくなった人向けには購入の選択肢に入るかもしれない。柿木、金沢は嬉しい決勝復帰。1年肩を温めて、どれだけ強くなったのか気になるところだ。

 惜しくも決勝進出がならなかったソフトにも少し目を向けてみると、まず6位(決勝次点)に備後将棋が入っている。昨年いきなり決勝進出を果たして衝撃を与えたソフトだ。金沢将棋と同じ6-3の星ながら、ソルコフの差で敗退。しかし、金沢将棋とは直接対決で敗れているので、これは諦めがつく結果だろう。
 奈良将棋、きのあ将棋といったソフトが6勝あるいは5勝1分しているのに対し、ハイパー将棋、KFEndといった前回決勝組は元気がなかった。星一つの差ではあるし、なにが起きるのが判らないのがコンピュータ将棋であるから、そんなにレベルとしては差がないのかもしれない。しかし、気になるところではある。
 礒部将棋、将皇、SPEAR、K-Shogi、うさぴょんといった「フリー最強組」も今回は不発気味。けんどじゅうらい(←なぜか変換できない(笑)。「ちょうらい」だと変換できるが、「じゅうらい」とも言うよなぁ……)を期待したい。

 下馬評は、客観的に見てもIS将棋vsYSSvs激指の三強勝負、といったところだったろう。
 この三強に他のソフトがどうからむか。また、場合によっては三強の一角を崩すことができるのか。

 



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