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激指3vs激指2


1回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指2が先手。角換わり腰掛け銀に進む。激指2は53手目▲2三歩成まで、激指3は54手目△同金寄までが定跡。
 ▲2七飛と浮いて▲1七角と角をこちらに転換するのは、善悪はさておき面白い発想だと思う。ただ、本譜は▲2四飛の瞬間に△7五歩の切り返しが厳しかった。▲同歩は△7六歩と王手飛車を含みに攻められる。それを受けて▲7九玉△7六歩▲8八銀では辛すぎ、まずは激指3が一本取った。

 しかしここから激指2がうまい指し回しを見せる。▲2五桂から桂交換し、更に▲3五歩から金銀交換。この瞬間の後手陣は非常に薄いし、攻め駒も重複している。うまく捌いたと思う。
 これに対して激指3は△2二銀。玉が薄いので埋めた、という手だろう。ここまではまだいい。だが、ここから▲8三桂△9二香▲9一桂成△8二飛▲7二歩と進んだのはどういう手順か。駒得目当て(だと思う)に▲8三桂と打ち、それをさせんと△9二香△8二飛。しかし▲7二歩と垂らされて困っている(笑)。▲8四金から▲7四歩と食いついて、ここでは激指2が有利だろう。

 驚愕の手順はこれだけでは終わらない。△9一飛に▲7二香とと金にヒモをつけ、互いに攻めがないと見るや△3一歩▲6八金右△2三金と陣形整備。そしておもむろに▲7三歩成から▲8三桂と飛車を捕獲に行く。
 ▲7二香というのはかなり打ちづらい手だ。というか人間の感覚では、先の見通しがなければ打てないと思う。おそらく、激指2は飛車を封じ込めて捕獲する筋が見えていたのだろう。しかしそれにしても、ここに壁を作って飛車を取りに行く手がそんなにいい手かなぁ……。

 激指2は桂を捨てて▲9三角成とするが、△6四馬から△2五桂ともたれたのが粘っこいしのぎで、激指3が盛り返した。焦った激指2は▲1五歩と突き捨ててから▲6一飛と打ち込んだが、逆に△1六歩とされて困っている。更にベタベタと持駒を自陣に打ち、すっと△2二玉と立ったところでは既に大差。△4三銀と形よく玉を固める手なども飛び出し、以下手数はかかったものの着実に激指3が勝ち切った。


2回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指2が先手。▲7六歩△3四歩▲4八銀と秀春流っぽい出だしだったが、結局昔の「新旧対抗系」風の陣形に落ち着いた。双方ともに70手目△3五角まで定跡。
 △3五角に▲5五歩△6三銀▲7八玉とでもして8八の傷を消しておけば先手十分だったと思うのだが、激指2は▲6四角と出てまともに△8八歩を喰ってしまう。▲9七桂が一応先手にはなるが、これは「一時力」というやつで、△9五歩と桂頭を攻められて既に激指2が困っている。

 桂得で満足するかと思ったのだが、そこから激しく行くのが激指3の特徴のようだ。△8五桂打から飛車を捨てて△2二玉は「そこまでするか」という手だが、△7八歩成と△9九歩成が見合いなので十分という読みなのだろう。ここ、激指3は▲9五飛(!)という受けを読んでいたが、それはどーなのよ(笑)
 激指2は▲7七銀とこっちの歩を取り、▲7八玉から▲6八玉と遁走する手順をとった。これは好判断だったと思う。
 ただ、ここは一本▲8八歩△同成香を利かしておきたかった。これが入っているだけで本譜とはまるで違う。本譜は△7六歩が攻めをつなげる好手となった。以下△3八銀成まで、飛車を取ってしまうのが判りやすい攻めだ。
 ▲4四桂の攻めに△同銀と食いちぎって△4七銀成が詰めろ。これで決まった。
 負けはしたが、激指2の頑張りが目を引いた。


3回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指2が先手。角換わり腰掛け銀へ。綺麗な定跡形で、双方ともに76手目△5五銀直までが定跡。
 △6六歩の筋が厳しいので飛車を切って▲1三歩と勝負に出たが、△2九飛が厳しすぎる。5九の銀をボロっと取られて終わってしまった。しかし▲6八銀打などとしても△6六歩で飛に油を注ぐだけだ。
 飛車取りに目もくれず△6七銀とからんで、あっという間に先手玉を寄せてしまった。
 組んだ形が既に後手有利、という気もするが、激指3の快勝。


4回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指2が先手。激指3の四間飛車に激指2は8八玉型左美濃。双方ともに56手目△4七飛成までが定跡。
 激指3は、57手目▲5七歩を敗着としている。なかなか大胆だが、△8四桂と打たれてみるともうまずい。本譜の▲3二角でなく▲6七銀打としても同じで、やはり桂頭の傷が大きすぎる。△4九龍と突っ込む手など攻めには困らないし、なにより後手陣が鉄壁で手の出しようがない。

 ではどう受けるかという問題だが、▲6七銀打でも△8四桂▲3二角△2五歩くらいで後手が勝ちそうだ。▲4八飛なら△同龍▲同角△4二飛▲4四歩△3二飛▲4三歩成△3一飛▲2二飛△5一飛が次の△5六飛▲同銀△7六桂以下の詰めろだし、▲5九角と辛抱しても△7五歩▲同歩△7六歩▲5八金(▲同銀は△5六龍)△4九龍▲4八飛△同龍▲同角△7七歩成▲同銀△8五桂打▲8六銀△7六歩▲同銀△7七歩……という手順で寄りそうだ。
 既に△4七飛成では後手優勢だと思う。そういう変化を選ぶなと何度も……(r


5回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指2が先手。激指3の三間飛車に急戦を仕掛けたが、▲4七銀から仕掛けを断念したため持久戦になった。

 以前から、激指は金銀を玉の周りに貼りつけるのが好きだと思っていたが、本譜などはまさにその好例だろう。途中の△3二歩などもどうかと思うが、傷を作らないようにするコンピュータらしい考え方だ。結局先手後手ともに矢倉の形に組み替えた(笑)。
 △5五同銀に▲5六歩では不満と見て▲5六銀とぶつけ、戦いに入った。銀を手に入れて、次の狙いは▲2三歩△同飛▲3五銀である。△2三歩はその防ぎだが、これは辛い。先手の激指2は▲3一銀から▲2二歩と食い破り好調だ。
 ゆっくりしているとと金を活用されてしまうので、激指3は△8五桂を利かせてから△4五歩△4四歩と捌き。しかし、▲4五金と落ち着かれてみるとどうにも攻めが続かない。

 このまま激指2の受け切り、初勝利かと思ったのだが、▲2五歩が方向を誤った。ここは▲5九香と飛車の方をいじめるべきで、△6六飛▲6七歩△6五飛▲5五桂となれば後手は手も足も出ないだろう。銀を1枚得はしているが、△5九飛成と成れて後手もやる気が出てきた。
 ここで▲3八飛が筋に惚れた悪手。飛車を働かせたい気持ちは判るが、△5六角が厳しかった。予定の▲3三飛成は△7八角成▲同玉△5八龍で即詰みである。▲1八飛は予定変更だがこれでは一手かけて後手に急所の角を打たせたことになる。
 △5九飛に▲5二飛も薄い受けだった。攻防の飛車を一手で打てた勘定にはなるのだが、結局▲6七銀と受けるのでは意味がない。ここは単に▲6七銀とするべきで、それなら△5六歩▲5八歩(この交換をしないと▲5五桂△6二金引▲5三歩と攻められる)△1九馬▲2一飛とゆっくり攻められた。
 △5三香から△5七香成が厳しく、ここからは激指3の独壇場となった。


6回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指2が先手。▲7六歩に激指3は△4四歩のパックマン。これは驚いた。
 パックマンの定跡では△6二玉で△3三桂とし、▲9六歩△7七角右成▲同銀△4五桂▲4八銀△7七角成▲同桂△8九飛▲7八角△9九飛成で優勢となっているが、両者ともにこの定跡はない。もっとも、昔白砂も研究したことがあるのだが(笑)、上記手順△9九飛成に▲6六歩(4五の桂取り)△8八銀▲6八角で先手優勢だと思う。▲6六歩がなんとも味のいい手だ。△7七銀成は▲同角が龍に当たる。この展開は覚えておいて損はないだろう。

 本譜は△6二玉だったので激指3の単なる2歩損で終わってしまった。
 二枚替えから玉が3二に逃げ出すところまでの壮大な手順(笑)がすべて定跡。なんとも綱渡りな手順で、これホントに後手玉は寄らなかったの? という気もするのだが、のらくら逃げられてしまって白砂の腕ではダメだった。

 △3二玉に▲4九玉がなんとも不可解な一手。本譜の▲6六銀引▲6八銀▲5七銀引という展開を見れば、例の金銀を貼り付けるのが好きな激指らしい展開だなと判るのだが、▲8一飛成や▲8二飛成で十分だと思えるところにこの手順は判らない。これは激指3も同様で、▲4九玉を好手としている。
 ガチガチに囲った激指2だが、▲3九銀と引いたために△1九飛と打たれて少しおかしなことになってきた。更に馬を作られてから△6七香と打たれて、着々と(笑)一枚ずつはがされていく。先手陣の右辺は壁のため、先手の攻めよりも△8六歩からのと金の方が早い。金銀5枚の堅陣があっという間に崩壊してしまった。


7回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指2が先手。▲9六歩からひねり飛車模様に。
 激指2の▲9七角に激指3が△8九飛成と飛び込んで、一気に緊張が高まった。▲8八角とフタをするが、△7四歩と飛車回りを阻止して難しい形勢だ。
 結局飛角交換になったが、激指2が35手目▲7八銀まで、激指3が36手目△8八龍までと、この辺までが定跡だ。あとは力の戦いである。

 ▲8三歩と垂らして△8五歩を消してから飛車回りと芸の細かいところを見せた激指2だが、激指3の△7六歩▲同飛△6五桂がそれを上回る好手だった(白砂には全然見えなかった。弱い(泣))。直接的には△5七桂成▲同玉△7九角の両取りを見ているのだが、金銀逆形のため妙に受けづらい。例えば▲8九金は△9四角▲7四飛△6六角▲同歩△6七銀▲5九玉△5七桂成で寄ってしまう。激指2は▲8四飛と打って受けたが、これでは辛い。
 ここからの激指3の指し回しもうまかった。△9四歩から△9三角と飛車を取り返すと、△8三銀、△8二歩と一転して受けに回る。そして△5七角成と形を乱して△6五桂。△7七桂成▲同銀としてまだ桂損だが、これは後手有利だろう。
 当然、次は△7九飛とか飛車を下ろして攻めるものだろう。▲6二銀△7七飛成▲5一銀成△同銀の展開は、二枚飛車が厳しく後手が勝てそうだ。
 ところが、激指3はここで△7五飛。これでも勝ちかも知れんけど、なんと言うか……。
 こんな時、人間だったら意地でも▲7六歩なんだろうが、コンピュータは冷静なので(笑)攻め駒を残して▲6三成桂。しかし、これだと△7七飛成で、△7九飛▲6三成桂△7七飛成という展開と同じになる。こういうのは厭なもんなんだがなぁ……。

 ここから▲3九玉△3二玉▲2八玉△3三金と申し合わせたように玉形を整備し合い(笑)、▲5二銀にも冷静に△2二玉と早逃げ。更に、△5二歩と攻防の▲5四角を消してから△7八龍。これが△2七銀以下の詰めろでは勝負あった。


8回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指2が先手。横歩取り△8四飛型から、先手が▲2八飛と引いたためにゆっくりした戦いとなった。双方ともに70手目まで定跡となっているが、これは絶対誰かの対局だな(笑)。

 本譜は▲2五桂と跳ねて△5一角▲2三歩△同銀▲8五歩△2四飛という展開だが、なんで△8五同飛と取らないのかが判らない。激指3の検討モードでは以下▲8六歩△8四飛▲8七金△3三歩▲6六角△2七歩成▲同飛△7四飛となっているが、これは先手有利なのだろうか?
 ▲8七金というのも難しい。普通は▲7八金だと思うのだが(これは激指3も指摘している)。8六のアナを嫌ったものだろうか。
 桂を犠牲に▲1一角成となった激指2だが、△3三角とぶつけられて馬を消されると▲2七歩成だけが残ってしまった。▲3七金と受けるようでは失敗だろう。
 ▲7三角成△同金までで激指3の勝利。尻切れのようだが、▲同龍は△7九金で詰んでしまうのではどうしようもない。

 相手がコケているだけという気もするが、普通の指し手を積み重ねられるというのも強者の証であろう。


9回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指2が先手。今度は横歩取り△8五飛戦法。先手は▲3七銀から▲4六銀と出る形で対抗した。『最前線物語』のテーマ24の形そのままである。『最前線物語』で「△1四歩だろうか」と書かれている通りに進み、そこから▲3四歩△4五桂▲4四角△同歩までが激指2の定跡。激指3はそこで▲6六角までが定跡としているが、激指2は(思考で)▲6九玉。定跡から別れを告げた。

 ▲6九玉に△4二金上▲7九玉△3一玉。この玉を大事にする指し回しが激指の特徴だ。ここから更に▲6六歩△8四飛と陣形を整えて、そこでようやく▲2五飛と取った。こういう将棋を指さない白砂には少しゆっくりしているように見えるのだが、実際のところはどうなのだろうか?
 激指3が桂を捌く間に、激指2は▲2三桂から▲1一桂成と香得。△7五桂にも▲9五角から飛角交換して▲6一飛と好調だ。▲4六銀も冷静で、▲9一飛成などとゆるんでいると△6七桂成▲6八香△7八成桂▲同玉△5六角で一気に寄ってしまう。

 ところが、△7八成桂▲同玉△5六角▲6七桂△9四角となってみると雲行きが怪しい。二枚の角が攻防によく利いている。激指2は▲5一飛成から▲7一飛成としたが、△5二玉で攻め切れない。好調に攻めていたように見えて、どうも実は難しい形勢だったようだ。
 ▲6七銀は△5八飛が詰めろなので▲7六歩は仕方がない。しかしそれでも△5八飛で王手金取りがかかった。
 角を取らせる間に△5八龍と玉に迫って、激指2は受けがない。敗因がよく判らないが、それだけ激指3がうまく指したということなのだろうか?


10回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指2が先手。またまた横歩取り△8五飛戦法。激指2は、今度は▲3八金▲4八銀の構え。『最前線物語』のテーマ22の形だ。△2三歩に▲3六飛としたところで『最前線物語』とは分かれたが、激指2は62手目△7二飛が、激指3は次の▲8三角までが定跡となっている。なにか実戦例があるのだろう(笑)。
 ちなみに、面白い現象が起きている。
 この将棋を激指3に解析させると、63手目▲8三角が敗着と出る。てめぇの定跡ファイルはなんなんだ一体(笑)。

 実際、▲7二歩に△8一飛と逆先を取ってから△8九飛と打ち込んだところでは、駒割りこそ互角だが玉形が大差。これは確かに後手有利だ。
 ▲2七玉と玉形を直した手に△3六歩がなかなかにくい。激指シリーズは玉の安全度を高く評価する傾向があるようなので、逆に相手の玉の安全度を低める手は気軽に指せるのだろう。人間は玉が薄いと逆転負けを喰らいやすい。こんなところにも「人間が指すと激指は強く感じる」一因があるのだろう。
 △5六龍と切ったところで持駒角桂桂桂。アタマの丸い駒ばかりだが、激指3は△3五桂と打って素早く寄せた。
 結局、激指2先手番で10戦全敗。凄いことになった。


11回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 ここからは激指3が先手。激指2の四間飛車に激指3は居飛車穴熊。激指2も△9二香で相穴熊の展開となった。
 定跡は激指2が56手目まで、激指3は57手目まで。

 △9四歩に▲7七角と引いたのには驚いたが、▲6八桂で受け切っているという読みなのだろう。しかし、△6六飛までとなってみると先手玉はかなり薄い。それを解消すべく、激指3は▲6七銀と一枚入れてから▲6三歩と攻めた。
 先手先手で攻め、▲7三歩△同銀など味な利かしも入れるなど激指3の指し手は快調そのもの。しかし激指2も△7一金打など頑強に粘る。そして▲5四歩に颯爽と(笑)△4五桂。王手飛車を含みにした激指2の勝負手で、実に穴熊らしい戦い方だと思う
 続けて、いっぺん△6六歩を利かしてから龍を抜いたのもうまかった。おかげて次の△8四桂が先手になった。激指3は仕方なく▲8五銀と逃げたが、なおもと金をそのままに△6七金の打ち込み。この辺はまるで有段者のような指し回しだ。

 決めるだけ決めて△6二金右と手を戻したのが冷静で、手がかりがあるからもう攻めは切れない。激指3は▲4五歩と桂を外したが、△7八金からベタっと△6八金が穴熊流。
 激指3も▲5八歩などの手筋を見せたのだが、穴熊玉は遠かった。激指2、嬉しい初勝利。


12回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指3が先手。▲7六歩△3四歩▲4八銀△3五歩▲6八玉△4二飛の出だしから、激指3は居飛車穴熊に、激指2は四間飛車から石田流に組み替えた。両者とも70手までが定跡。

 △2四歩に▲5八飛というのもなんだかよく判らない手だが、手待ちという意味なのだろう。
 それに対し激指2は△4二角。△2四飛▲3六歩△2六歩▲同飛△同飛▲同角△2七飛で単純に有利になると思うが、激指2は△2六歩が読み入らなかったようだ。ちなみにこの局面、激指3も△2四飛に▲3六歩△同歩▲同金しか読めない。そんなに難しい手には見えないのだが……。
 激指3の▲2三金が勝負手。単純に香を取りに行ったコンピュータ特有の手という気もするが(笑)、指されてみると意外と難しい。飛車が窮屈なのだ。△2六歩から△3六歩はこれくらいだが、▲5六金、▲2六飛と激指3の駒が輝きだした。こうなると2三金も生きている。

 激指2は端に味をつけてから飛車交換を目指したが、これは居飛車穴熊がはっきり得。全部駒を取り合ってみると、穴熊の固さと金がいない美濃囲いの弱さだけが目立ってしまう。
 以下、いくばくもなく激指3が寄せ切った。

 しかし、激指2の△8五香ってなんなんだろう……?


13回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指3が先手。相矢倉に。両者とも70手までが定跡。
 そういえば、激指にしろ東大にしろ、70手まで定跡という将棋がやけに多い。定跡ファイル作成時、70手で切ってるとかそういうことなのだろうか?(笑)

 定跡が終わって▲7六銀直となってみると、▲6四角を狙いにしてバカに先手がよさそうだ。本譜もそのまま▲6四角が実現し、▲8二歩からと金を作った。激指3が有利だと思う。
 △4八金の寝技に▲8三とと踏み込んだのが激指3らしい指し手。ここは▲2八飛くらいでも十分なところだからだ。△6三飛に▲7四金がコンピュータらしい手厚い手で、二枚飛車が実現しては先手が優勢だろう。
 以下、手数は長いが形勢は変わりようがない。激指3の圧勝。


14回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指3が先手。激指2のゴキゲン中飛車から、なんと激指も向かい飛車に。相振り飛車となった。両者とも70手までが定跡で、これはもうデフォなのかな(笑)。

 △4六歩が軽い手だった、▲同玉とされるのも怖いが、△4五歩▲同玉△7五龍とかいろいろやっていくつもりのようだ。激指3は王手で▲4二飛と打ち、▲5八金と詰めろを消した。
 しかしこれが大悪手。△6九角が激指3の読みにない手だった。
 激指3の読みは△3八角。△4七金の詰めろという点では同じだが、△6九角は▲4六玉と逃げた時に△5八角成と金を取れる。これが△3五金以下の詰めろなのだ。
 慌てて▲7四桂の犠打から▲4六飛成としたが(単に▲4六飛成は△7八角成と金をタダ取られる)、平凡に△7八角成から二枚替えでこれは後手が十分だ。

 ▲4一龍に△4五歩と逃げ道を塞いだのもコンピュータらしい手で、人間だったら▲7一銀とか▲7一角とかが怖くて△6一金打とか△8一金打とかしそうなところだ。激指3は更に突っ込んで、△4五歩を疑問手と診断、△7七龍▲6七銀△4五歩で後手十分と読んでいる。△7七龍に▲4六玉とはできないから、確かにこの方が簡明だ。
 本譜は怖そうな攻めだが、清算してみれば先手の攻めが切れ筋なのは明白。▲7五飛は仕方がないが、しっかり受けて△4六銀で即詰みだ。
 激指2、嬉しい2勝目。


15回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指3が先手。▲7六歩△3四歩▲7五歩△5四歩▲6八飛というなかなかの曲者な出だしから(笑)、相振り飛車へと進んだ。またまた両者とも70手までが定跡。
 とりあえず白砂などは57手目の▲5七角で▲8四歩から歩交換し、▲9七角として▲6四歩△同歩▲6五歩を狙いたいが、これを指したプロは何か別の構想があったのだろう。

 △1四歩に、思考ルーチンに入った激指3は▲8五桂と跳ねた。殺される心配はほとんどないし、なにかの時に▲7四歩△同歩▲7三歩から桂馬も手に入れられる。ただ、この手はあまりいい手ではないと思う。この桂は6五に跳ねて5三の銀を狙いたいので。また、仮に▲8五桂とするにしても、▲1六歩とか▲2八玉とかじっくり自陣を整備してから跳ねるのが手順というものだろう。本譜は結局▲1六歩や▲2八玉という手も指したので元に戻った感じではあるが。
 じっくりと自陣を整えてから、手のない激指2が△6四歩と玉頭から動いた瞬間を捉えて▲5五歩。△同歩に▲5四歩△同銀▲6四歩として橋頭堡を築いた。

 壁銀が酷い形で、激指2は強く戦えない。逆に言えば激指3はそこが付け目で、角銀交換ながら飛車を捌いて優位に立った。▲2四飛に△8七角は必死の防戦だが、平凡に▲2二飛成で問題ない。
 △4七歩からは激指2の反撃。一応は玉頭に嫌味を作ったが、▲1二龍に△2七歩成から△2二歩と受けないといけないようでは勝負あった。激指3は▲4四桂から▲2五銀と飛車を捕獲し、二枚飛車で寄せ切った。


16回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指3が先手。激指2の四間飛車穴熊に、激指3は棒銀で挑んだ。両者とも40手までが定跡。

 ▲2八歩と飛車打ちを消したが、それでも△3五飛▲同銀△3九飛があったと思う。ただ、激指2はそれを見送り▲3五同銀に△3三金。▲5一飛にも△3一歩と受けの手順を選んだ。
 この辛抱に耐え切れなかったか、激指3が突っ込む。▲4二龍までは穴熊が2枚であることに期待した攻めだろうが、△6二角が冷静な受け(もっとも、穴熊党なら△7二銀か)。▲3三龍と駒を補充できないのが痛い。
 ▲5四金から▲7二銀は激指3捨て身の攻めだが、△6二歩と受けられてみると切れ筋は明白である。このあとも△8二銀打△7二金と穴熊流の駒埋めが出て後手陣は鉄壁。▲3三龍に△4四角打で、先手最後の頼みの龍も消えてしまった。

 △2八龍から小気味よく龍を活用しつつ、受けるところはしっかり受けてつけいる隙を与えない。△3六歩からと金を作り、じわじわと駒得を重ねて激指2が寄せ切った。


17回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指3が先手。相矢倉▲4六銀▲3七桂という綺麗な形。後手の激指2は8・9筋を詰めて待つ。仕掛けてから64手目△5四同銀までが激指2の、次の65手目▲同銀までが激指3の定跡である。
 しかし、定跡から外れた瞬間、△3八角成で後手優勢(-701)というのはどうしたものか。相変わらず激指は定跡選択がヘンだ。

 ところが。
 ▲5五角から金銀を交換して▲5四金と打ってみると、どうも状況がおかしい。7三の桂が質になっていて3四に空間があるので、持駒が金桂だと▲3四桂で後手玉は詰んでしまうのだ。よってこの金は取れない。そこで△3二玉だが、▲4四金で△同銀は▲同角で香取りと角成が見合い。これは攻めになっている。だとするとさかのぼって▲5二銀に対する受けは△5四銀ではなく△3二玉だったか……ということになるが、いかにも薄い受けだ。
 本譜は△7九銀から角を抜こうとしたが、▲9八玉でダメだった。△5八飛は▲4三金△同玉▲4四銀で角にヒモがついてしまう。金銀交換して△5八飛は仕方がない、▲6八銀が冷静な一手で差が開いた。

 自陣が鉄壁になった激指3は悠々と▲1一角成とし、▲4六香としばって入玉もさせない。
 最後の▲4三銀もしゃれた決め手で、△同玉は▲4四馬以下即詰み。そのまま激指3が寄せ切った。


18回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指3が先手。初手▲5六歩の力戦中飛車に対して、激指2は相振り飛車を選択した。19手目▲5六飛までが激指2の定跡。このあと、激指3は△7二金までを定跡にしていたが、激指2の指し手は△2四飛だった。

 ▲8八角にスキありとみて△5四歩と突き、戦いが始まった。
 激指3は▲8六飛から▲5六銀とひねった受け。これに対し△5五歩▲同銀△5四歩▲6六銀△2六歩▲同歩△同飛▲2七歩△2四飛……と位を消しておくのも自然な指し手だとは思うのだが、激指2は単に2筋を交換してあえて▲4五銀と取らせた。△5五歩に期待した手だろう。
 一段落して△6一玉となった局面を見ると、持ち歩の数も多いし陣形も意外としっかりしている。▲7四同飛と歩交換した瞬間に△2六歩と垂らしたのもうまく、ここまでは激指2が一本取った感じだ。

 激指3はいったん駒を引いてから▲2七歩と嫌味な垂れ歩を払いに行く。しかし△2六歩から△1六歩の端攻めがあった。こうなると序盤に手をかけた端も生きている。飛車を犠牲に玉頭に食いついたあたり、激指2が有利と見ていいだろう。ただ、▲2八歩にいったん△1七歩と受けなければいけないのは辛い(▲1三飛があるから)。
 ここでなにかいい手があれば、激指3が逆転できそうだ。
 ▲7四歩からの攻め合いが激指の選択だった。やはり攻めに重点を置いている感じがする。銀交換して▲2三飛とおろし、△2四銀と打たせた。これは確かに先手が逆転したようだ。

 ところが、その棋風が災いした。
 △6六歩に▲3六桂と攻めたのがそれ。ここは▲6八金とがっちり受けておけば激指3の優位は動かなかった。
 △6七歩成とと金を作り、▲9八飛に△5四銀が激指2渾身の勝負手。ムリヤリ▲5四歩と取らせ、△8四角から△6六角左と二枚角で攻めたのだ。
 この攻めに激指3は全然気づいていない。△4八角成とされてはじめて-1146となり、そこで事の重大さに気づいたようだ。しかし時すでに遅し。△1六歩としばって必死である。
 激指2、奇蹟の逆転劇。


19回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指3が先手。激指3の矢倉に激指2は右玉を採用。双方ともに70手まで定跡だが、これもやはりなにかの実戦なのだろう(笑)。

 △8三玉が難しい手だ。これは、単純に△2八角だと、▲4六角△3四銀と本譜と同じように進んだ時、▲2三歩ではなく▲6四銀△同銀▲2八飛△同歩成▲5四角の王手金取りを防いだ手。これは後手が不利になる。かといって先に△5四歩だと、▲4四銀△4一飛▲3五角(銀にヒモをつけつつ5三銀成を狙う手)△4二金▲2四角△2三銀▲4六角でやはり先手有利。激指2もしっかり読んで△8三玉を選択したようだが、これでは苦しい。
 激指3は普通に捌いて▲6四角から▲5三銀と打ち込んだ。ここで△6三金が激指2のミス。激指3が指摘したように△7二金としていればまだまだ判らなかった。以下の想定手順は▲4二銀成△2三銀▲3二成銀△同銀▲7五歩△6三銀▲4二角成△4一銀▲3三馬△2八飛成▲4四馬△1九と▲1一馬で互角、というもの。検討モードで見ていくと△4一銀のところで△4一銀打▲5三馬△5二銀上▲2二歩△4一飛▲5二馬△同銀▲7四歩△同玉で先手有利と変化するが、どちらにしてもこの手順の方がよかった。
 激指2がなぜこの手順を選ばなかったのかは判らない(検討モードで見ると△7二金と指す)が、これ以降形勢はどんどん開いていく。▲5二角の両取りから銀を手に入れ▲3二銀。飛車を奪って▲5二飛。そして急所の▲7五歩に手がつき、将棋は終わった。
 結局、王手を一度もかけさせずに激指3が完勝。


20回戦  棋譜はこちら(別窓で開きます)

 激指3が先手。激指3の四間飛車に激指2の居飛車穴熊模様。それを見て浮き飛車に組み替える激指3と、浮き飛車を見て5筋位取りに切り替える激指2。めまぐるしく動いたが、全て定跡だった。激指2は62手目△4八香成までが、激指3は次の▲4八同金までが定跡。

 定跡ファイル終了後の△6四歩がまず「方向が違う」と思う。ここは△4四銀引と引きたい。
 ▲同銀なら△同角▲4五香△6六角で、▲4二香成△同銀▲5七歩なら△4三香。▲5七歩△4七歩成▲4二香成△同銀▲4七金なら△7七角成▲同金△7九龍が詰めろ。難しい戦いとなる。また、▲4四同銀で▲3四銀なら△5六角と打ってどうか。▲4三歩に△3四角と△5二金寄が考えられ、若干先手がいいとは思うが、実戦的には難しい。
 本譜の流れは△4四銀引▲3四銀の変化と同じような流れだが、銀が5五と4四では玉の安定度が全然違う。▲5四桂・▲4五香と激指3の攻めがまともに入ってしまった。桂香で攻められると、取ったその駒を受け駒に使えないので困るのだ。△8四角の両取りにも▲4二金から押していって▲3一同金が▲2二金△同玉▲2一金△同玉▲3二銀以下の詰めろ。先手玉は詰めろすらかからない大差である。
 結局、最終局も激指3の完勝で終わった。



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