コンピュータ将棋レビュー
第3回コンピュータ将棋学生選手権
2002年11月15-17日に開催されたGPW2002において、サイドイベントとしてコンピュータ将棋学生選手権が開催された。HPに棋譜が落ちていたので、さくっと拝借していつものように公開する。
1回戦 2回戦 3回戦 4回戦 5回戦 6回戦 7回戦 成績 SB 順位
1.YSS 山下 宏 ○
永吉○
Sexy先○
大槻先○
TAC○
SPE先○
うさ○
礒部7-0 21.0 1
2.礒部将棋 礒部 正幸 先○
Sexy○
永吉○
TAC先○
大槻○
うさ先○
SPE先●
YSS6-1 15.0 2
3.うさぴょん うさぴょんの育ての親 ○
大槻先●
TAC先○
永吉○
Sexy先●
礒部●
YSS●
SPE3-4 4.0 4
4.SPEAR ●
TAC●
大槻先○
Sexy○
永吉先●
YSS●
礒部先○
うさ3-4 4.0 4
5.TACOS 静岡大飯田研 先○
SPE○
うさ先●
礒部●
YSS先○
永吉○
Sexy先○
大槻5-2 10.0 3
6.大槻将棋 大槻 知史 先●
うさ先○
SPE●
YSS●
礒部先○
Sexy先○
永吉●
TAC3-4 4.0 4
7.Sexy-AI 東京農工大小谷研 ●
礒部先●
YSS●
SPE先●
うさ●
大槻先●
TAC先○
永吉1-6 0.0 7
8.永吉将棋 永吉 宏之 先●
YSS先●
礒部●
うさ先●
SPE●
TAC●
大槻●
Sexy0-7 0.0 8 名目こそ「学生」選手権となっていますが、おそらく確実に学生ではないであろう(笑)AI将棋なども参戦しているので、実質的には将棋ソフトのオープン戦に近いと思われます。コンピュータ将棋選手権に出場しているソフトも多数あり、「決勝にまでは行かないくらいだけどそこそこ強いソフト」同士の激突、といった感もあります。
上表のとおり、AI将棋が当然のごとく優勝を果たしました。
2位には礒部将棋。星勘定としてはAI将棋に負けただけという素晴らしい内容です。第12回コンピュータ将棋選手権で2次予選7位になった実力はダテではありませんでした。
3位に入ったのはTACOS。コンピュータ選手権では1次予選を通過したりしなかったり……というくらいなんですが、ここでは見事な結果を出しました。礒部将棋との直接対決に勝っていれば2位。次回のコンピュータ将棋選手権が楽しみになってきました。
4位は大混戦で、うさぴょん、SPEAR、大槻将棋の3者が入りました。
一応、勝ち星が同数の場合の規定もありますが、勝った相手の勝ち星の数も同じなら、直接対決は巴の状態で順位つかず。こういう場合にはジャンケン、という決めまであったようですが、仲良く4位ということにしたようです。うさぴょんは「フリー最強」の呼び声も高いソフトなだけに、この結果は不満でしょう。
7位と8位は最終戦の直接対決という劇的なシチュエーションで、結果Sexy-AIが勝って7位となりました。しかし、このSexy-AIって、「せくしぃあいちゃん」……?
永吉将棋−AI将棋は、永吉将棋の筋違い角。しかし、どう見ても定跡をあんまり入れていなさそうで、ムダな手損を繰り返す。そのうちにAI将棋に陣形の不備を咎められてしまい、角桂交換の駒損になってしまう。こうなってはAI将棋が間違える筈もなく、70手で吹っ飛ばした。
礒部将棋−Sexy-AIはSexy-AIの中飛車に対して礒部将棋の3八飛戦法。綺麗な形から綺麗に攻めた礒部将棋だったが、角得の戦果を上げたにもかかわらず突如指し手が乱れる。それでもやはり角得というのは大きかったようで、そのまま寄せ切った。なお、勝ったのは礒部将棋の筈なのだが、どういうわけか指し手は先手番で止まっている。
大槻将棋−うさぴょんは大槻将棋の三間飛車。定跡かその場の思いつきか、うさぴょんは△5五角△7三角から△3五歩△3六歩の奇策を見せる。これが見事に決まって銀得となった。
しかしここからの大槻将棋が強かった。飛車を犠牲に▲1一飛成と成り込むと、▲3五香以下執拗に玉頭を攻め立てる。一時は逆転したようにも思えるのだが、直後に攻めを誤りうさぴょんの幸いするところとなった。個人的には、▲5三金ではなく角交換して▲7一角くらいで決まっていたと思うのだが。
最後のTACOS−SPEARは相掛かり。ひねり飛車を志向したTACOSが▲9七角とした手に対して、SPEARは指してはいけない△8九飛成。これは相当先まで読まないと悪手だとは判らないので、定跡に登録していなければ指してしまうのは仕方がないと思う。とすると、コンピュータ同士の対戦では有効かも(笑)。その後もTACOSの指し手は冴えに冴え(若干の疑問手はあったが)、最後は綺麗に寄せ切った。通信トラブルがあったようだが、潔く投了したSPEARにも拍手を送りたい。