コンピュータ将棋レビュー
第13回世界コンピュータ将棋選手権 決勝
2003年5月3/4/5。日本中のコンピュータ将棋ファンが注目する大会、第13回世界コンピュータ将棋選手権が開催された。
現在、コンピュータ将棋界ではもっとも権威ある大会だと思われる。それだけに、市販ソフトのパッケージなどには「第○回世界コンピュータ将棋選手権優勝!」などの文字が躍り、優勝ソフトは\12,800、それ以外は\9,800という格差まで生まれる(笑)。あ、ちなみに今のはウソです。
CSAではその棋譜を全て公開している。今回はそれを元に、この大会を振り返ってみたいと思う。
毎回書いていることだが、ここでは全てのソフトを商品名で呼びたいと思う。YSSはAI将棋だし、IS将棋やKCCは東大将棋や銀星将棋とする。この方が一般には判りやすいと考えたからである。実は、CSAの配布資料には「置き換えてくれるな」と書いてある。それに従うのが筋なのだろうし理由も判らないわけではない。商品と大会出場ソフトはイコールではないし、イコールだと思わせても思われても不当な商品の宣伝になる可能性もある。もちろんこの他にもあるかもしれない。
しかし、「ユーザーが手に入れられるのはあくまでも商品であって、大会出場ソフトではない」とはいっても、判断の基準をそこに求めるのは自然な行為だと思う。イコールではないかもしれないが、大幅に違うわけではないだろうから。それをしてくれるな、というのは、(開発者側ではな)くユーザー側の希望を考えていない意見だと白砂は思う。
CSAの意向を汲み、対戦表には両名併記という形を取るが、文章や棋譜は商品名を使っていきたいと思う。また、こうやってエラそうに解説を書いている白砂の棋力はと言うと、将棋倶楽部24で初段程度のヘタレである。最近実戦不足だしなぁ……(泣)。
対戦表は以下の通り。
プログラム名 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 勝 | 敗 | 分 | |
1 | 激指 | 先5 | 6 | 先7 | 8 | 先3 | 4 | 2 | |||
2 | 東大将棋(IS将棋) | 先8 | 7 | 先6 | 先4 | 5 | 3 | 先1 | |||
3 | 銀星将棋(KCC将棋) | 先7 | 先5 | 8 | 6 | 1 | 先2 | 4 | |||
4 | KFEnd | 先6 | 先8 | 5 | 2 | 7 | 先1 | 先3 | |||
5 | AI将棋(YSS) | 1 | 3 | 先4 | 先7 | 先2 | 8 | 6 | |||
6 | 永世名人 | 4 | 先1 | 2 | 先3 | 先8 | 7 | 先5 | |||
7 | 備後将棋 | 3 | 先2 | 1 | 5 | 先4 | 先6 | 8 | |||
8 | ハイパー将棋9 | 2 | 4 | 先3 | 先1 | 6 | 先5 | 先7 |
上位3チーム、つまり激指、東大将棋、銀星将棋の3ソフトがシードで、残りは予選勝ち上がり組みである。
予選通過1位はKFEnd。同星ながら、ソルコフで勝った。一方、AI将棋はうさぴょんに一発喰らったのが痛かった。それがなければ全勝で一位通過だったのだが。
表を見て判る通り、選手権の常連、柿木将棋や金沢将棋の姿が見えない。両ソフトとも二次予選で落ちたのである。予選通過ソフトとは星一つ違う結果なので、これはもう力が違うとしか言いようがない。しかも、8位と9位で、その上の6位と7意は礒部将棋とTACOS。フリーソフトにやられてどーするよぉ(泣)。
しかし、それ以上に驚いたのは備後将棋。
なんと初参加。
ネット上に公開することもなく、ひそかに開発を続けていたらしい。それで決勝進出とは恐るべし。今大会の台風の目の一つであろう。
更に、2年ぶりの決勝進出となったハイパー将棋、2年連続の決勝進出となった永世名人。ともに市販ソフトとしての評価は高くないが(<ごめんなさい)、柿木、金沢を押しのけて決勝進出したソフトである。油断はできない。特に永世名人は予選で柿木、金沢を破っている。ひょっとするとひょっとするかもしれない。
下馬評では東大将棋vs激指の一騎打ち、という声が大きかった。
まぁ、市販されているソフトの実力を考えると当然の予想だと思う。これに、AI、柿木、金沢勢がどうからむか……と言っていたのだが、もう既にこの予想は外れている(笑)。
近来稀に見る大混戦になるのではないか……。
そんな予感を感じさせる顔ぶれである。