コンピュータ将棋レビュー

第13回世界コンピュータ将棋選手権 
決勝


●2回戦

●永世名人 vs ○激指
  http://www.hakusa.net/shogi/kifuup/kifu/205.html

 1回戦同様、永世名人得意の矢倉早囲い戦法。しかし、激指は的確に対応し、素早く攻撃陣を作っていく。前述の話と矛盾するようだが、トップクラスのソフトだときちんと対応はできるのだろう(定跡かもしれないが、選手権マシンでは定跡はあまり積まないという話を聞いたことがあるので、激指が考えて指していると思う。それか、対永世名人用に組み込んだか)。
 激指が△6五歩で先端を開き、跳んだ桂を睨みながらの駒組みとなった。
 ここで永世名人の▲8八玉がどうだったか。ダイレクトに角筋に入っているので、さすがにキツいだろう。ここまで指すなら▲9八玉までいかないと怖いのだが、永世名人は▲3七銀。ここからは角筋を生かして攻め切られてしまった。手数こそ長いが、玉の安全度が違うので大差である。

●備後将棋 vs ○東大将棋
  http://www.hakusa.net/shogi/kifuup/kifu/206.html

 東大将棋の三間飛車に備後将棋は得意の急戦で挑む。
 しかし、東大将棋の△4二金△4三金△5四金って一体……?
 そして、この金を備後将棋が的確に咎めるのである。凄いぞ備後将棋。

 どこかで一回▲1六歩と突いていれば違う展開もあった(例えば、▲3六銀と出て行く手も成立する)のだが、それを省略したまま進めたため、東大将棋に△1五角とゆうれい角で捌かれてしまった。しかし、▲3五歩でうまく耐え、▲5四歩と攻めに出た感触も悪くない。
 個人的には、▲2二歩で▲2三歩ならどうだったか……と思う。△3三角なら▲3四歩と突けるし、△3二飛には▲2二歩成から▲6五銀がある。もっとも、▲2二歩もなかなかの手で、少し悪いながらもうまく食いついていると思う。なにしろ、相手はあの東大将棋なのだ。
 △2七歩成に▲1五飛〜▲6五角も驚いた。備後将棋はかなり受けがしっかりしていると思う。△3八歩成に▲3二とと言うのも秀逸な構想で、人間なら自然に▲3三角成としそうなところだ。と金で飛車を取りにいき、▲2一飛からと金を払って粘るというのは(善悪は別にして)なかなか思いつかない。そのあとも銀を犠牲に、わらわらいた攻め駒を一掃してしまった。
 惜しかったのは▲7七歩。
 ここは▲4七歩でしょう。▲4八香でもいい。とにかく、先手を取って龍を追いかけたかった。▲7七歩はそれからでいい。続く▲2八龍も▲4八龍と先手を取って受けるべきところで、細かいようだが、このあたりのチューニングが備後将棋の課題だと思う。
 ここからは東大将棋にどっしりと落ち着かれ、徐々に寄り切られてしまった。本当に惜しかった。備後将棋残念。

●銀星将棋 vs ○AI将棋
  http://www.hakusa.net/shogi/kifuup/kifu/207.html

 銀星将棋の四間飛車穴熊に、AI将棋は珍しい2二玉型の左美濃。
 AI将棋の速攻に銀星将棋は全く対応していない。あっという間に飛車先を突破され、駒損を重ね、そのまま破れた。
 判りやすい形になってしまったとはいえ、もう少し光るものを見せて欲しかった。

●KFEnd vs ○ハイパー将棋9
  http://www.hakusa.net/shogi/kifuup/kifu/208.html

 ハイパー将棋の四間飛車にKFEndは居飛車穴熊。4四銀型から、△5五歩▲同歩△同銀▲5六歩△同銀▲同銀△5五歩という攻めで先端を開く。玉頭位取りでよく見る攻めなのだが、相手が居飛車穴熊では遠さと固さが違いすぎる。▲2四歩△同歩▲2三銀からじっくりと攻められる展開になってしまった。
 それでも△5六歩から△5五角と、3六歩を咎めるという当初の目的は達成した感じだ。6七金と5九角の形が悪く、▲2四飛と走れないのもポイントの一つである。しかし、次の手が難しい。
 本当のところ、次にどう指していいのかよく判らない。本譜は△5二飛から苦心の攻めだが、果たしてどうだったのか。歩をうまく使って飛車を遊び駒化したのは評価していいと思うのだが。白砂だったら、△5五角と出ないで△5二飛とかしたと思うが、それでいいのかどうか判らないし。主導権は握っているものの、難しい形勢なのだろう。
 それでも、△3四飛まで、二枚替えですっきりと捌けていると思う。次の△3六飛もあるし、ここでは振り飛車やや優勢だろう。とすると、KFEnd側にもう少し工夫の余地があったか……?

 ▲5五角からは駒の取り合いだが、ハイパー将棋の△5三銀が手堅い。△4七龍はどうかと思うが(歩を取ると垂れ歩の攻めかあるので、対イビアナでは歩を取らないことが有効なことも多い)、△5四銀打から△6三銀の繰り替えがうまく、美濃囲いは容易に崩れない。△5二歩もしっかりした受けで、これであとは攻めるだけとなった。
 △8四桂からは待望の反撃。KFEndも金を犠牲に粘るが、なにしろハイパー将棋は山のように桂香を持っている。穴熊は桂香には実にもろいのだ。あっという間に穴熊城は崩壊してしまった。
 ハイパー将棋完勝。この棋譜だけを見たら、24でR1700といっても驚かないんじゃないだろうか。

 プログラム名 1234567
5AI将棋(YSS) 1○3○先4先7先286  200
2東大将棋(IS将棋) 先8○7○先6先453先1  200
8ハイパー将棋9 2●4○先3先16先5先7  110
3銀星将棋(KCC将棋) 先7○先5●861先24  110
4KFEnd 先6○先8●527先1先3  110
1激指 先5●6○先78先342  110
6永世名人 4●先1●2先3先87先5  020
7備後将棋 3●先2●15先4先68  020

 2回戦を終わったところでの星はこういう状況。
 予想通り、東大将棋とAI将棋が星を伸ばしている。激指も片目を開けたし、普通に考えてこの3強の激突になることは間違いないだろう。
 となると、下位集団ではハイパー将棋が一歩リードしていることになる(3強を除いた星では1-0)。銀星将棋とKFEndはともに一発喰らっているのが痛い。
 どこかで上位3強に一発入れれば、ハイパー将棋がシード獲得、なんてことも起こりうるかもしれない(星が固まるとソルコフで下位陣が一発入れた星が重要性を増す)。
 永世名人と備後将棋はいまだ0勝。片目を開けるのはいつだろうか……?

  



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