コンピュータ将棋レビュー

第13回世界コンピュータ将棋選手権 
決勝


●3回戦

○激指 vs ●備後将棋
  http://www.hakusa.net/shogi/kifuup/kifu/209.html

 決勝トーナメント初の横歩取り。しかも備後将棋は4五角戦法を選択。またマニアックな戦法を……(笑)。
 しばらく定跡通りの展開が続くが、激指が手を変えた。「激指2」では▲3六香が最善手となっているが、▲8四飛と打ったのだ。
「激指2」ではここで△2六飛と打ち、駒を取りまくったあと自陣を補強して後手よしとなっているのだが、備後将棋は△6六銀。▲3六香と打った場合の変化では出て来るのだが、ここではどうだろうか。以下、▲6八玉△6七銀成▲同金△6四飛と続く。
 しかし、これでは銀香交換の駒得も消えてしまうのではっきり後手が悪い。平凡に▲6四同飛△同歩▲8三飛で参った。
 結局、差は縮まることはなく、激指の勝利。
 横歩取りはさすがに危険すぎると思う(笑)。

○東大将棋 vs ●永世名人
  http://www.hakusa.net/shogi/kifuup/kifu/210.html

 東大将棋の矢倉に対して、永世名人はなんと舟囲い。
 当然、東大将棋はするすると銀を出て行くが、永世名人は3筋の歩交換を許す代わりに早囲いに組み上げる。この辺りの攻防は予定されたものなのかどうか判らないが、狙ってやっているとしたら永世名人もかなりのものだ。実際は1歩持たれるマイナスも少なくないのだが、とにもかくにも矢倉の堅陣には納まっている。

 伸びすぎた6五歩めがけて永世名人が攻め、東大将棋は3筋で得た1歩で▲3三歩から桂交換を果たす。それぞれがきちんと目標通りに指している感じで、非常に強さを感じた。再度の▲2五桂に手抜きで△6六歩、という感覚も悪くない。△8六飛まで、桂得の戦果である。
 しかし矢倉戦というのはよく判らない。▲8七歩▲5七歩▲7七歩と傷を消し、▲2五桂と打つとなんとなく勝負になっている感じがするのだ(笑)。永世名人も一歩も引かずに殴りあうが、△7四飛と引いたのが逸機だった。
 ここは△3八飛と打って攻め続ける一手だった。
 合駒を打つしかないが、▲6八歩には△6七歩と攻めていけば攻め切れたと思う。▲7五銀は△6八歩成以下詰みだし、▲6七同銀には△6六歩だ。
 もっとも、△7四飛と逃げても十分に見えるかもしれない。▲2五桂には△2二玉と引いて耐えていそうだから。
 しかし、運が悪かった。
 ▲4一角に△6四飛と逃げたのだが、▲3二角成からばらして▲5六桂で王手飛車。しかも、△5三玉に▲6四桂と取った形がなんと詰めろなのだ。
 ここからは永世名人が勝てないと思う。永世名人にとっては残念な一局だっただろう。 

●ハイパー将棋9 vs ○銀星将棋
  http://www.hakusa.net/shogi/kifuup/kifu/211.html

 ハイパー将棋の四間飛車に、銀星将棋の4六銀戦法。非常にオーソドックスな急戦である。銀星将棋が△7五歩と押さえ、亜急戦の形に入った。
 ハイパー将棋の▲6八飛で定跡から離れた。
 ▲5五角から▲8六歩と捌いた辺りではハイパー将棋十分な形だと思うが、△4四金に▲同角から▲7二金と決めに出たのには驚いた。△9五角と打たれれば△7七角成までは一直線である(実際は、一回▲8五飛と浮いて、△7七角成▲8二金とすれば△8四歩の一手となり(それ以外は▲8三飛成)、1歩余計に使わせることができると思う)。その時に6七の銀が当たりになっている、つまり後手を引いた捌きあいなので躊躇してしまうのだ。
 しかし、決めるだけ決めて▲5六銀がうまい継続策だった。これは非常に「感触のいい手」だ。これを指せるハイパー将棋は強いと思う。

 ところが。

 ▲3四銀から格言通りに玉を下段に落とし、▲4三銀成まで。完全に寄ったと思ったのだが、△1二飛で案外寄りがないのである。上部が広く開いているので、どうにもうまく追えないのだ。白砂もいろいろ考えたのだが、残念ながら寄せは発見できなかった。

 ところがところが。

 最後は△3七歩成で棋譜は終わっている。一応、これで即詰み。▲同銀以下は非常に長いが、やってみればそんなに迷わず詰ませられる。
 しかし。
 CSAの星取表を見ると、「引き分け」
 なにがあったんだろう?

○AI将棋 vs ●KFEnd
  http://www.hakusa.net/shogi/kifuup/kifu/212.html

 AI将棋が3手目角交換でいきなり注文をつけた。結果、角換わり腰掛け銀のような形になり、先手番に変わったKFEndが先攻。
 ところが、KFEndの△7四歩にすかさず▲5一角。馬を作る展開となり、AI将棋が局面をリードした。KFEndも△2七角から馬を作って対抗したが、歩損が残る展開に。こうなると局面が判りやすくなるので、人間同士なら先手が勝ちやすいと思う。
 どうするのかと思ったが、KFEndは△4五歩から△4四銀左と自玉頭から局面を打開にかかった。指されてみればなかなかの手で、次に△4六銀ともなれば立派なものである。▲7五馬に△4四銀上とでも指しておけば、KFEndの優位に展開したのではないだろうか。
 しかし、実戦は△7四歩。▲8六馬に△8二飛と馬を追いながら大駒を活用する狙いだが、▲6四馬△同馬▲同歩△5四銀に▲6三歩成が利いてしまったのが不運だった。取れば▲5五角の王手飛車である。
 ここでの読み違い(というかこんな先まで先読みはしていなかったのだろう)は大きく、もう修正のしようがない。あとはAI将棋が上から押さえつける格好となり、逆転の目のない将棋となってしまった。
 勝ち筋はあったと思うので、残念だと思う。

 プログラム名 1234567
5AI将棋(YSS) 1○3○先4○先7先286  300
2東大将棋(IS将棋) 先8○7○先6○先453先1  300
1激指 先5●6○先7○8先342  210
8ハイパー将棋9 2●4○先3△先16先5先7  111
3銀星将棋(KCC将棋) 先7○先5●8△61先24  111
4KFEnd 先6○先8●5●27先1先3  120
6永世名人 4●先1●2●先3先87先5  030
7備後将棋 3●先2●1●5先4先68  030

 3回戦を終わったところでの星はこういう状況。
 東大将棋とAI将棋が3連勝、激指が2-1と3位に踊り出て、予想通りの展開だ。

 下位集団では相変わらずハイパー将棋が一歩リード。引き分けというのが少し釈然としないが、仲良く星を分け合った結果ハイパー将棋と銀星将棋が下位集団トップになっている。
 永世名人と備後将棋はいまだ0勝。内容がさほど悪くないだけに、なんとしても勝たせてあげたいと思う。思ってもどうにもならないんだけど(笑)

  



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