市販将棋ソフト紹介
将棋ワールドチャンピオン激指2
2002.12.22 作成
2002年12月5日、『将棋ワールドチャンピオン激指2(以下『激指2』)』が発売された。コンピュータ将棋界に旋風を巻き起こした『将棋レボリューション激指(以下激指1)』の後継版である。本稿では『激指2』の実力について検証してみる。
検証した機種は自作機で、CPUはP4-1.6G、メモリは512MB積んでいる。また、白砂自身は将棋倶楽部24で初段。大学を卒業してすぐくらいに5段の免状を取ったのだが、今はその頃の棋力はない(泣)。
まず気になるのはその強さ。コンピュータ将棋選手権で優勝したソフトである。まずそこに興味は行くのは当然だろう。
初めに、『激指2』の実力を探るため、得意の振り飛車ではなく居飛車で指してみた。強さは一番強い4段に設定。
相居飛車の斬り合いを想定したのだが、『激指2』は四間飛車穴熊。こちらが慣れていないこともあってか、十分な陣形に組まれてしまった(弱い……)。少し不利のまま捌き合いになり、そのまま一手違いで負かされた(泣)。
すぐに再戦。
今度は同じ▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩の展開から、急戦を仕掛けてみた。右5七銀型っぽい出だしから、少し定跡を外した仕掛けである。先の指しっぷりから激戦を予想したのだが、この定跡外しに引っ掛かって『激指2』は簡単に土俵を割ってしまった。
今度はこちらが後手、『激指2』を先手にして、▲7六歩△3二金の出だし。どうするのかと注目していたが、普通に▲2六歩と指したので定型の中飛車戦に戻った。勝負はあっけなく『激指2』の負け。
その後も何局か指したのだが、どうもそんなに強い感じがしない。
こちらがわざと悪い手を指すとしっかり咎めてくるので、棋力としては低くないと思う。ただ、「怖さ」がない。ソフト相手に怖いの怖くないのというのもなんなのだが(笑)、これが『東大将棋5』だと、多少こちらがよくても嫌味を突いてきたり頑強に粘ったりといろいろやってくるのである。『激指2』はそんなことはなく、悪くなると悪くなったままそのまま負けてしまう感じがする。こういう表現をしていいのかどうか判らないが、次善手さえ続けていれば勝てる感じだ。
では、実際に『東大将棋5』と比べるとどうなのか? また、『柿木将棋』とはどうか。更に、1世代前の『激指1』に比べて、どれくらい強くなっているのだろうか?
まずは他のソフト、具体的には『東大将棋5』と『柿木将棋6(桃木等の無料定跡ファイルドーピング済)』と戦わせてみた。ともに持ち時間は無制限(999分)。もちろん学習機能はオフにしてある。
結果は以下の通り。
激指2 東大将棋5 戦形 1回戦 先○ 後● 相矢倉。 2回戦 後○ 先● 矢倉崩れ。先手銀冠。 3回戦 先○ 後● 後手陽動振り飛車(四間)。 4回戦 後○ 先● 先手下段飛車から棒銀模様。 5回戦 先○ 後● 相掛かり。先手3七桂戦法? 6回戦 後○ 先● 後手陽動振り飛車(三間)。 棋譜はすべてこちらに上げてあります(別窓)
激指2 柿木将棋6 戦形 1回戦 先○ 後● 横歩取り3三桂戦法。 2回戦 後● 先○ 後手三間飛車先手5七銀左戦法。 3回戦 先● 後○ 先手三間飛車後手居飛車穴熊。 4回戦 後● 先○ 後手四間飛車先手居飛車穴熊。 5回戦 先● 後○ 後手四間飛車先手左美濃。 6回戦 後● 先○ 後手四間飛車先手左美濃。 棋譜はすべてこちらに上げてあります(別窓) ただし。
掲載しておいて言うのもなんだが、このデータ、「結果」が参考になるのかどうか非常に疑問である(<をい)。実は、『東大将棋5』と『柿木将棋6』だと、白砂の環境では東大将棋が圧勝するのだ。それなのにこの結果では、なんだかジャンケンをみているようである。
もっとも、2chスレなどには、「ドーピングした柿木は東大5より強い」といった書き込みも多数あり、だとすると白砂の環境での東大−柿木戦が特殊だった可能性もある。また、たった6戦ではこの程度の偏りは十分に起こりうることでもある。単純に『激指2』は振り飛車戦が苦手なだけかもしれない。
詳細な棋譜を別ページに掲載したので、興味のある方は棋譜の一手一手を見ながら実力を判断して欲しい。
「自分が対戦するなら、東大将棋5の方が手強い」と思うのだが、ソフト間の勝負となるとそういう部分は飛んでしまう可能性が強いし、申し訳ないが、なんとも言えない。そんなにもの凄く強くはないが、厭になるくらい弱くはないというのが正直な感想だ。
次に激指1との違いについてだが、白砂は『激指1』を持っていないので対局させることができないし『激指1』の強さも知らない。そこで、2ch『コンピュータ将棋スレッド』の投稿を引用させてもらう。
激2って、思考時間が1よりも長くなったね
しかも29秒連発
P3の1.7GHzクラスだとスペック足らないみたい
やっぱりそう感じますか?
激指って思考時間の速さがウリだったんだがなぁ
なぜ、あんなに思考時間が長くなってしまったのだろう?
そのくせダラダラと長考してる時に限って“変な手”指すことが多いのは気のせい?
激指1の方がまだよかったかも・・・
4段モードを追加した(3段モードより読みを深くした?)からでは?
激指1の時の次の一手の研究用モードを4段モードにしたような気がしないでもない。
激2は1より弱くなっている感じがします。
期待して買ったのですが・・
残念
激指2の思考表示を見てみると時々重要な読みが落ちているみたいです。
読みに時間をかけてもいいのたから、もう少し強いソフトをつくろうよ!
激2は変な手が多くて困っています。
手が見つからないと持ち駒を使ってすみにある香車をとってみたり
矢倉で玉頭をついたり形がゴチャゴチャになります。
昔のソフトとやっているようです。
早く何とかしてください。これを読む限り、どうもそんなに進歩していないようだ。
また、『白砂青松の将棋研究室』常連のnuevoz氏の言によると、
東大将棋5と10局ほど対局させてみたが、結果は5対5で、1と数字上では変わりありませんでした。
激指1と激指2を対局させてみると、やはり激指2のほうが強いですね。
また、形勢判断に微妙な差があり、ほんのちょっと激指2のほうが読みが深いようです。だそうである。こちらは2を1より「ほんのちょっと」強いと判断している。
これらを総合して考える限り、『激指1』からの「強さ」としての進歩はあまり期待できないと思われる。
『激指1』の指し手の速さについては定評がある。……らしい。何度も言うように白砂自身は一度も対局していないのだが、巷ではそういう評判のようだ。
では、『激指2』の速さは?
結論から言うと、そんなに期待していたほどのものではない。
他のソフトに比べれば、特に長考派の『柿木将棋』などに比べれば断然早い。しかし、『東大将棋5』と比べるとそんなに早いとは言えない。勝負どころで考えるのは仕方がないとはいえ、『東大将棋5』の場合はその手の周辺数手くらいしか長考(といっても40秒前後)しない気がする。『激指2』は、勝負どころから10手くらいズルズルと考えている感じである。特に自分が悪いと思っている場合、未練たらしく(笑)考える癖があるようだ。
また、速さとは違うが、「考えるようにする」設定というのも取り込んで欲しかった。『激指2』の場合、最長でも29秒で指すように設定されているらしく、それ以上考えることはない。東大将棋シリーズのように敢えて持ち時間を設定してもそれは変わらない。
これだけ強いのだからもう少し(せめて1分くらい)考えて欲しいという気もするし、この弱さなんだからもう少し考えろよという気もする。強さに若干の不満が残るだけに、この「思考時間をユーザーが調節できない」という点は気になった。
実は、『激指2』には、棋譜解析や次の一手指南用に「長考(研究用)」という時間指定がある。こういう思考設定が用意されているのならなおさら、対局時にもその思考を設定できるようにして欲しかった。
激指シリーズの最大のウリは、自らの思考を全て公開するという点だった。『激指2』でも、それは継承されている。
まず棋譜解析。
『東大将棋5』や『柿木将棋』でも棋譜解析はできるが、『東大将棋5』は悪手を指摘する程度だし、『柿木将棋は』3手分の読みしか表示しない。しかし、『激指2』の場合は、平均して7手から15手の読みを披露してくれる。
もちろんそんなに先まで正しい読みだとは言えないが、『激指2』の大局観と読みをできるだけオープンにしてくれるという姿勢は評価したい。また、そんなにバカ外れた読み筋ではないので、初段くらいまでの人なら十分に参考になると思う。
大体、3手程度の読み筋を教えられても「その先は?」というケースが多いと思う。『激指2』くらいの「長い読み」を出してくれれば、こういう狙いでいくから先手がいいんだ、などとユーザーが判断することができる。逆に言うなら、それくらい「狙い筋」を示してくれないと、棋譜を解析させても意味がない。終盤の詰み筋を見つけるだけの解析では貧弱すぎる。
また、従来はこの棋譜解析の結果は表示させるだけだったらしいのだが、『激指2』ではクリップボードから取り込むことができる。「ファイル(F)」→「クリップボード」→「解析結果の書き出し(A)」である。こんな感じで表示される。実際にこれを「取っておく」人がどれだけいるのかどうかは判らないが、正直言って解析結果の画面は小さいので見づらい。場合によってはプリントアウトしてでも、画面と解析結果を見比べたいという要求はあると思う。また、自分のHPに棋譜を載せている人も数多くいるが、その棋譜にこれを添付してもいいかもしれない。
次に対局時だが、「表示(V)」→「思考ウィンドウ(T)」で思考内容ウィンドウを表示することにより、対局中にもリアルタイムに『激指2』の思考を見ることができる。具体的にはこんな感じである。( -236) △1七香▲7一角打△5二飛▲1七銀
( -306) △1七香▲同銀△同香成▲同玉
( -306) △1七香▲同銀△同香成▲同玉
( -221) △1七香▲同銀△同香成▲同玉△1六歩打▲2八玉
( -289) △8六歩▲同歩△1七香成▲同銀△同香成▲同玉△8六飛
( -216) △8六歩▲同歩△1七香成▲同銀△同香成▲同玉△1六歩打▲2八玉△8六飛
( -221) △1六歩打▲同歩△同香▲1七歩打△同香成▲同銀△同香成
( -261) △2四銀▲3八金△8六歩▲同歩△1七香▲同銀△同香成
最善手は 2四銀
( -149) △3三銀▲4四歩△同銀
( -129) △3三銀▲4四歩△同銀▲4五歩打△3三銀
( -235) △4五歩▲4一角打△6二飛▲4五桂△パス▲8五桂
( -350) △1七香▲同銀△同香成▲同玉△4五歩▲同桂
( -476) △1七香▲同銀△同香成▲同玉△4五歩▲6六角打△3三歩打▲4五桂
( -322) △1七香▲同銀△同香成▲同玉△1六歩打▲2八玉△4五歩▲6六角打△3三銀▲4五桂
( -199) △1七香▲同銀△同香成▲同玉△1六歩打▲2八玉△4五歩▲1四歩打△4四金▲7一角打△1七銀打▲3八玉△1八銀成
( -433) △4五歩▲5六銀△3三桂▲3八金△1七香▲同銀△同香成▲同玉△3四金
最善手は 4五歩
( -84) △4四金▲7一角打△4二飛▲5三角成
( -198) △5三金▲4五桂△4四金▲5三桂成
( -26) △5三金▲4五桂△4四金▲7一角打△4二飛▲8五桂
( -743) △1七香成▲同銀△同香成▲同玉△4四金
……『激指2』が考慮中、ウィンドウの中にこれらの表示が次々と出てくる。これを見ているだけで、なんだか頭の中を覗いている感じがして楽しい。
できればこういう機能を持ったソフトがどんどん出て欲しいと思う。上位ソフトではいろいろ問題もあるのだろうが、フリーソフトなどではやってもいいのではないだろうか? そうすれば、「この局面でこう考えるのがおかしい」と問題を報告するのも簡単になるし、開発者も問題の切り分けが簡単にできるだろう。とりあえず『うさぴょん』『礒部将棋』あたりからひとつ……(笑)。
残念なことに、こちらの思考表示の内容は全て保存することができない。一応、対局結果をクリップボードから取り込むという機能はあるのだが、対局中のこの思考部分は取り込めないようだ(最善手の部分だけしか取り込めない)。また、このログはどんどん流れてしまって一定量しか残らないようになっているので、どうしても取り込みたければこまめにコピペするしかない。
せっかくの機能なので、この部分は残念だ。選択性にして、ログを取りたい人は取らせるようにするのはさして難しくないと思う。環境的に無理な人もいるというのは判るが、出たものを消さないようにするだけなのだ。できないということはないだろう。
注目の130万手定跡だが、戦形によってはかなり突っ込んで入力されている。『東大将棋5』との対局などでは、72手まで定跡、なんていうことまであった。しかしこれを「とんでもない」と書けないくらい、今の定跡ファイルは充実・進歩しているんだと思う。
編集は少し判りにくい。『激指2』の場合、通常の「良手」「悪手」「不採用」という分類の他に、「頻度」という項目がある。察するに「その局面にきた場合○%でその手を指す」という意味だろう。元々の思考パターンが「その局面で何%この手が指されているか」みたいなところがあるので(詳しくは『激指』のページを参照)、その名残だろう。
問題の編集機能なのだが、白砂は「頻度の変更の仕方」が判らなかった。
例えば、初手を見ると、▲7六歩が82%、▲2六歩が15%となっている。相掛かりマスターにさせようと思った場合は▲2六歩の頻度を上げるわけだが、その場合、15%と書かれている文字をクリックして頻度を上げるのだ。これが感覚的に非常に判りにくい。しかも、1%単位で細かく設定できるわけではなく、1クリックごとに自動的に頻度が上下してしまうのだ。常に合計を100%に保っておかなければならない都合なのだろうが、これは非常に扱いづらい。
定跡編集においては、やはり『柿木将棋』がまだ一歩リードしている感じだ。
その他の機能について、いくつか挙げておく。
○レーティング戦
『激指2』と何度も対局してRを算出することにより、ユーザーの実力が判る、というものだ。こちらのRの上下に合わせて『激指2』側で微妙に強さを調節して対局してくれるので、自分がどれくらいの実力なのかが判る。
とはいえ、判定者自体が『激指2』なので、当然それはソフトが判断した実力、ということになる。正直言ってまだそんなに細かい判定ができるほどソフトは進歩していないと思うので、この機能についてはあまり信用しない方がいいと思う。単純に、何度も『激指2』と対局する場合の励みと捉えるべきだろう。東大将棋シリーズのいろんなモードと同じようなものだ。○指導対局
コンピュータがリアルタイムで指してを評価してくれる。
こちらが指した後、「▲5三銀は悪手ですね。ここは▲2五桂が最善手です」などと表示してくるのだ。もちろん待ったが可能なので、指し手を変えてもいいし、そのまま指し続けてもいい。
『激指2』の読みを上回った場合には「▲5三桂は好手でしたね。▲5一龍だと思ったのですが」なんて表示されてちょっと笑える。また、あんまり悪い局面のまま指し続けていると「投了すべきでしょう」なんてことも言ってくる(笑)。
指導対局の場合コンピュータの強さを設定できない。なので、どれくらい強いのか今いち判らない。こちらが本気を出した場合には向こうも最強モードで応じるようなのだが、わざと悪手を指した場合に弱くなる、というわけではないらしい。
上達の役に立つような気もするが、上記の事情により、多分初段くらいだとボコボコにされて終わるだけのような気がする。うまく勝負形を保ちつつ指導してくれる、なんていうモードだともっといいのだが、さすがにこれは贅沢というものか。○検討モード
棋譜を入力すると、リアルタイムで形勢判断をしてくれる機能。
タイトル戦やテレビ中継などを見る時に役立つ、ということだが、2chの実況対策だろうと思ったのは白砂だけではない筈だ(笑)。
ただ、なかなか役に立つ機能だと思う。候補手は「ファイル(F)」→「各種設定(S)」で変更できる。10コも出すとうざったいだけなので、5コくらい表示させるのがいいのではないだろうか。○詰将棋解図機能
一応、激指で詰将棋を解かせることができる。
しかし、その機能は物足りない。敢えて1項を設けずにここにまとめたのはそのためである。
通常の詰め将棋であれば、さして時間も掛からずに解かせることが可能だ。例えば『将棋世界』の詰将棋なら、全て秒単位で正解を出してくれると思う。
しかし、趣向作や長編になるととたんに手が出なくなる。
どうせ「寿」は解けるだろうと思い、白砂がチェックに用いたのは『将棋墨酔』。性格が悪い(笑)。ところが、これが全然解けないのだ。
最初、第1番を入力してみた。△1二玉▲2四金▲5四香▲9九馬、持駒歩18枚というシンプルな形である。柿木や東大なら20秒もあれば解ける。
これが解けない。
3分待っても正解が出てこない。
結局4分ほどかかったが、これは問題だと思う。そのあともいくつか問題を解かせてみたが、ことごとく遅い。
問題なのはそれだけではない。柿木形式の詰将棋ファイルを読んでくれないのだ。
柿木に解かせた詰将棋の問題を『激指2』に解かせようと思って読み込んでみたのだが、ファイルが壊れている云々と表示されて読み込むことができない。
余詰判定機能とか、そういう優しい機能も一切ついていない。
感覚としては、単純に詰めルーチンをつけてみました、という程度に近い。
『激指2』で詰将棋を解かせたり検討に使うことは考えない方がいいと思う。○ばんかなタンの読み上げ
新機能です(爆)。
激指ページには「更に、読み上げには矢内理絵子女流三段に加え、人気抜群の女子高生棋士バンカナこと、坂東香菜子女流2級が登場。対局の雰囲気を盛り上げてくれます」とある。
実際、白砂も聞いてみた。ロリロリっす。はい。
ねぇ、ホントに女子高生? 小学生と違うんかをい!? ってくらい激ロリ。
そっち方面の人は、たとえ将棋が指せなくても迷わず買って下さい(爆)。個人的には、「指導対局」はお勧めである。これから初段を目指そう、有段を目指そう、という人には参考になると思う。
使い方としては、思考表示をONにした状態で指導対局を行う。
これなら、悪手かあればすぐに指摘してくれるし、代わる正解手の指し筋が思考表示に7手から15手分も示されているから、それを見て勉強すればいい。強い人と指しながら、「これは悪い手だね。ここはこうこうこうやって指していくのがいい手だよ」と教わるようなもので、この方式なら上達も早いと思う。人間と違って文句も言わないし(笑)。
あまりいい評判を聞かない『激指2』だが、実際にどんな部分が問題なのか。
ユーザーの気楽さでその辺をあげつらって(<をい)みたい。こんなところだろうか。
- 思考時間が長い
- 1に比べて目立った強さがない
- 無駄な捨て駒、水平線効果が出る
- 定跡編集が判りにくい
- そもそも定跡ファイルの信頼性が低い
- 詰将棋機能が貧弱
- バグが多い
白砂自身は水平線効果を経験したことがないのだが、そういう体験をした人はいるようだ。自分が体験していないので突っ込んだコメントは控えるが、もしそうであれば改善して欲しいと思う。『激指2』に「人間らしい自然な強さ」期待している人は多いだろうから。
また、バグが多いのも問題だと思う。
特に、基本的な詰み判定のバグなんてものをほっといた(または気づかない)まま商品化するというのは酷すぎる。白砂も東大将棋との対戦で遭遇したが、この時の怒りというか脱力感というか、「なに考えてんだあんたらは」と嘆くような感覚、判ってもらえるだろうか。個人で配布しているフリーソフトやシェアウェアではないのだ。
一万なんぼかという高い金払って、店頭で買っているのである。最低限のことはして欲しかった。
もっとも、アップデートが頻繁に更新されるは好意的に考えることもできる。
例えば、アップデートのver.1.03は定跡ファイルに関する修正だが、これはnuevoz氏がメールで指摘したものらしい(もちろん、他にも指摘した人はいるかもしれない)。ユーザーの声をすぐに拾い上げて修正してくれる点は評価したい。
バグがない、というのが理想ではあるのだが(笑)。
定跡ファイルの信頼性についてはなんとも言えない。
ただ、一般的に「○百万手定跡」なんていうものは単純に実戦譜を抽出しているケースが多いと聞く。そうなると、いわゆる「定跡」というよりは「こう指されたことがある」という足跡にしか過ぎないので、どこまで信頼できるかは疑問である。実際に2chのコンピュータ将棋スレでも定跡の不備については指摘されている。
定跡ファイルに関しては『激指2』に限らずどのソフトにもお願いしたいことなのだが、いいかげん定跡ファイルを標準化してもらえないだろうか? ソフトに特化したバイナリの方がスピードその他で有利なのは判るからコンバータを準備してくれるだけでもいい。標準化さえしておけば、世の中にはヒマな人達が……あ、いやいやボランティア精神溢れる方々もいらっしゃるので、進歩した定跡については補完してくれるだろう。そうすれば、手数を水増しするためだけに無意味な手を入れた定跡ファイルなんてのはなくなるだろうから、かえってコンピュータ将棋界にとっても有用だと思う。
先に結論から言ってしまうと、最強のソフトを求めるのであれば『激指2』は見送りだと思う。反論もあるだろうが、おそらく『東大将棋5』の方が強いと白砂は見た。
今回の『激指2』は、むしろ思考ルーチンや定跡ファイルの強化発展というよりも、ツールとしての機能向上を目指したものと解釈したい。つまり、棋譜解析が出力できたり、思考ルーチンの使い勝手を向上させるために「検討モード」や「指導対局」を用意した。『激指1』ではただ強さをそのまま出していただけだったものが、『激指2』ではその強さの見せ方、表現を工夫したというわけである。
細かな使い勝手は向上したので、逆の表現をするなら、「『激指1』は強いけど使いにくいよ」と思ってた人なら買いかもしれない。また、ことさらに1より2が弱くなった、というわけではないと思うので、初めて激指シリーズを買う人は素直に『激指2』を買っていいと思う。
一番購入を勧めたい層は、「コンピュータ将棋で将棋の勉強をしたい有段未満の人」だ。
あまり評判にはなっていないが、新機能の「検討モード」はかなり面白い試みだと思う。もちろんまだまだ問題もあるが、それでも、初めてきちんと「指導」してくれるソフトが登場した。初段以下ならば間違いなく上達の助けになるだろうし、初段くらいの人にも有段の指し口が理解できるかもしれない。
『激指1』では最強の実力を見せつけ、『激指2』では人間を鍛えてくれるまでになってくれた。次はどんな「進化」を見せてくれるのか、楽しみなシリーズである。